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ケアコラム

ケアマネジメントに自己負担導入か?

 2010年10月28日におこなわれた社保審介護保険部会で、厚労省は2012年の介護保険の改正で、現行自己負担がない居宅介護支援(ケアマネジメント)に、利用者負担を導入するという案を示した。
 今のケアマネジメントの介護報酬(居宅介護支援費)は、各種の加算・減算は除き、利用者が要介護1、2の場合は、月額10,000円(※)、3以上の場合は、同じく13,000円である。
他のサービスと同じく、1割の利用者負担が加わると、月額1,000円か1,300円の自己負担が新たに発生することになる。
 介護保険制度が導入された時から、いつかこのような改訂が議論されるのではないかと考えた人もいるのではないだろうか。
 このような案を示す背景として厚労省の参考資料には、次の2つの意見が掲載されている。
  • 自立支援型のケアマネジメントが推進されるよう、居宅介護支援に利用者負担を導入することも検討すべき。
<地域包括ケア研究会報告書(平成22年3月)>
  • ケアマネジャーの利用においても自己負担を設け、利用者との直接契約を可能にするといった、ケアマネジャーを能力に応じて評価、処遇する仕組みを構築するべき。
<経済同友会「2009年度社会保障改革委員会提言」(平成22年6月)>
 ケアマネジメントだけに自己負担がない理由は、同じく厚労省の参考資料に制度導入時の考え方が掲載されている。
 「利用者個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境等に応じて保健・医療・福祉にわたる指定居宅サービス等が、多様なサービス提供主体により総合的かつ効率的に提供されるよう、居宅介護支援を保険給付の対象として位置づけたものであり、その重要性に鑑み」自己負担は無しにしたという。
<指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成11年老企第22号)>
 表現は難しいが、要するに、ケアマネジャーという専門家がケアマネジメントすることで、介護サービスが総合的かつ効率的に提供されることを狙ったということだろう。
 今回の厚労省案に対して、参加している委員からは、「ケアマネジメントの利用を抑制する」等の反対意見が続出したそうだが、制度導入当初の考え方が正しかったのか、それともケアマネジャーという専門家がマネジメントをおこなっても効果的ではなかったのかという議論もなく、「利用が抑制される」という理由だけで反対するのは如何なものか。
 新たな利用者負担で利用が抑制されるのは当然で、そのことでどういうデメリットがあるのかということを議論すべきであり、そのためにはケアマネジメントを自己負担無しにしたことの効果検証が欠かせないはずだ。
 「御用聞きケアマネ」といわれるような、利用者や家族の要望だけでケアプランを作ったり、ケアプランには利用者の同意が必要だからと、1ヶ月に1度玄関先で印鑑をもらって帰ったりするようなケアマネジャーなら、利用者が自分でプランを作るセルフプランでも良いのではないかという考え方が出てくるのはやむを得ないだろう。

 経済同友会の意見のように、利用者負担の導入が「ケアマネジャーを能力に応じて評価、処遇する仕組み」になるなら、それも良いのかもしれない。
 しかしながら、以上のよう状況を前提とした上で、敢えて今回のケアマネジメントに対する利用者負担導入には反対である。
 優秀なケアマネジャーがマネジメントしてこそ、介護サービスは効果的に提供される。
利用者本人や家族では絶対的に限界がある。

 但し、そのためには、ケアマネジャー個々が自らの専門性を高める努力が不可欠なことは言うまでもない。

 制度導入から10年、この期間が専門職のスキルアップにとって長いか短いかはわからないが、ケアマネジメントはまだまだ専門性を高める余地があり、そのことに逆行するような制度改訂はおこなうべきではない、と考える。
※実際の報酬は金額ではなく、単位で表され地域によって異なる金額を掛けて金額が求められる。ここでは、地域区分「その他」の1単位10円を使って金額を表している。