慢性疾患がある人は、それぞれの疾患と状態によって、定期的な通院や服薬が必要であり、水分、食事、塩分、カロリー等に制限がある場合があります。また、運動療法が必要な場合もあれば、逆に運動制限が必要な場合もあります。
これらは、病気の進行状況などに応じて、医師から指示されますが、指示や制限は比較的緩やかなものから、厳密に守らなければ重度化する危険性が高いものまでさまざまです。
慢性疾患は、生活習慣病といわれるように、手術を受けたり、処方された薬を飲んだりしてさえいれば治るというものではなく、毎日の生活をどのように送るかということが極めて重要です。
しかし、長年の生活習慣は、病気になったからといって急に変えることは難しく、強い意志と努力を要します。
そのため、介護者を初めとする周囲の理解と協力、励まし等が必要な場合が多いものです。
自立支援と各種の制限(水分制限、食事制限、運動制限)
慢性の腎不全や心不全等が進行すると、水分制限を指示されることがあります。高齢者の介護においては、脱水症を防ぐことがとても重要ですが、水分制限がある場合は、脱水症とのバランスに苦労することになります。また水分摂取量が少ないと、便秘になりやすくなるので、水分摂取以外の便秘対策が必要になります。
同じく、食事制限がある場合も、低栄養を予防しなければならないこととバランスをとるための注意が必要になります。
また運動制限は、廃用症候群による機能低下が起こりやすくなります。
また、認知症で慢性疾患を持つ人を介護する場合は、さまざまな制限を守ることが困難な場合が多く、介護負担が大きくなりがちです。
以上のように、慢性疾患がある場合には、ADLを向上させるための基本的なポイントの多くが制限される場合があり、ADLの維持向上と、慢性疾患の管理との間でバランスをとることがとても重要になります。
介護者は、受診の際に同行するなどして、主治医からの指示を直接聞き、場合によっては相談したり、アドバイスを受けたりした上で、日常生活において慢性疾患が重度化しないことと同時に、ADLの低下を防ぐことを支援する必要があります。
介護者がこのような役割を担うためにも、それぞれの慢性疾患に関する一般的な基礎知識を身につけておくことが重要だと考えられます。疾患